食は巡るぐるぐる
この島では、食事の位置づけがとても重要になる。
それは、島経済の中に入るうえで、重要だからだ。
魚、肉、野菜、果実、そのすべてが、店で買えないことはないが、おすそ分けでもらい、あげることをとても重要視するのだ。この巡りが、お互いの食を補完しあうような。
「補完しあう」という表現はとても適切に感じる。なぜなら、例えば魚を誰かにあげる人にとって、魚はその人にとって価値が低いものであるが、もらう人にとってはとても価値がある。もし価値がないものをもらったとしても、そこに価値を感じる相手にまた回すのだ。
もらった側はもらって終わりではない。
もらって終わりなら、なんだか一方通行で具合が悪い。だから、相手にとって価値のあるものを考え、自分の提供できるもので返すのだ。島に住んでいれば、大体「自分には価値はないが相手に提供できるもの」を持っている。それは、必ずしも食材である必要はない。もらったものを加工して料理としてもいいし、あるいはまったく異なる食から離れた役割の提供でもいいのだ。それを回すのだから、無理なくおすそ分け経済は回っていくというわけだ。
まさに、ライオンキングで言う「it’s circle life」ということか。
命が巡る情景は、命を巡らす世界にいないとみることはできないのだと思う。
「命が巡る」には、命を感じる経験が必要になる。この島の小中学生は、授業でイカや魚を毎年のように捌(さば)く。捌くことが必修になっているのだ。なぜなら、この島に生きていれば、捌く、すなわち命を奪う行為が日常だからだ。
野菜も、自分の家で自分とご近所が食べる分だけ育てている家は多い。その野菜すらも、引き抜くとき、処理するとき、命を奪う過程がある。
命を奪うことを知っているから、よりおいしく食べよう、食べきろうと考え、そのための様々な技術がある。この島の飯には、命が巡っている。
だからうまい!
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