ひとりの「自分」として、隠岐に立つ

第一番 阿曽沼 陽登(きよと)さん


――本日はインタビューの時間をいただき、ありがとうございます。最初は運営側のきよとさんにインタビューを受けてもらいたいなぁと思っていたので本当に良かったです。


きよと:よろしく。でもなんで、俺が最初なのよ。


――最初に運営側にインタビューをして、隠岐でどんなことを感じてもらいたいのか!という 部分を明確にしておかないと今後のインタビューの内容がブレるかなぁと思ったからです。


きよと:あ、そう。(笑)


――そうです(笑)。それでは最初の質問に移りたいと思います。きよとさんの半生を教えてください。

きよと:俺の半生なんてどうでも良いでしょ。


――大事なんです!どんな人生を送った人がこのイベントに携わっているということが!


きよと:まぁそうか。(笑)

俺は生まれは京都なんだけど、そのあと家族で海外に住んだりし て、小中高校時代は岡山県の倉敷市ってとこで育った。親が医者でさ。同じ道を辿りたいと思って、何年か浪人して、結局医学部でもない、普通の大学に入ったんだよね。 高校生の時まで本当に勉強しない生徒だったから本当にナメてたんだけど。


――今、きよとさんは、塾とかやったりしているので凄く意外に感じます。


きよと:まぁ、そんな高校生が急に医者になりますって言ってもみんなから笑われるわけよ。でもまあまあ時間かけて勉強して成績も伸ばしていったんだけどさ。本番になると、合格のラ インに届かないわけ。そうやって悩んでいるうちに気が付いたら北海道にいた。(笑)

――!?...大学入学前に北海道に行ったんですか!?自分探しの旅的なのですか?

 

きよと:合格するより先だよ。んー、何だろう。北海道に行ったというか、北海道に居たんだよね。微妙なニュアンスの違いなんだけど、ここ大事だから。(笑)


――了解です(笑)


きよと:で、北海道の大自然の中で酪農をやってたのね。その体験が今、隠岐に関わっている原体験みたいなものに繋がってくるんだけど。


――もっと小さい時、例えば小学生の時なんかは自然の中で遊んだ経験みたいなのはなかったんですか。


きよと:んーあんまりないなあ。小さい頃はチェロとかやってたから。


――話の端々から育ちの良さを感じてしまいます(笑)


きよと:まぁ、そこはどうでも良くて...まあはっきり言うと結局大学受験で挫折して、逃げただけなんだよ。そうしている内に北海道に居て、酪農家さんとなんとなく仲良くなって、 そこに居着いたと。その経験は俺にはすごいプラスになったから、北海道に行って、酪農して良かったと思ってるけどね。


――どんな部分がプラスになったんですか。


きよと:それが、荒野に立つってことだな。


――つまり!?


きよと:誰も知らない環境で、1人の人間、阿曽沼 陽登として俺は北海道の荒野に立ったような気がしたんだよね。これが凄く良い経験だった。何者かになるために追われていたんだなあと思ってさ。 もちろん、北海道でも牛の世話に追われていたんだけど(笑)


――(笑)


きよと:いずれにせよ、俺の中で実体験として北海道があったのよ。この価値をね、たくさんの 人に知ってもらいたいと思って、それが隠岐でのイベントの開催につながったんだけど。


――半生の質問から流れるように隠岐の話に繋がっていっているんですが(笑)


きよと:実体験としてあって、それがいまにしっかり繋がってるからね。当たり前だけど。


――それと、大学はどうなったんですか。


きよと:北海道から離れて被災地で教育をやったりもしたんだけど、そのあと大学には合格したよ。


――どこの大学に...


きよと:慶應義塾大学に。


――あぁ、エリート...(笑)あと、もう一つ気になるのは、なんで隠岐だったんですか?北海道の方が、きよとさん的には良いような 気がしますが。


きよと:隠岐だったのは、実はそんなに理由はないんだけど(笑)、やっぱり大学でイブキに出会ったからだなぁ。イブキってのは今回の舞台の西ノ島のとなりの知夫里島生まれ、隠岐 島前高校出身のやつで、大学入学直後のオリエンテーションでたまたま席が隣だったんだ けど、イブキの実家が牛飼いで。慶応でそんなことなかなかないと思うんだけど、牛飼いに縁がある2人がたまたま席隣同士になるっていう。(笑)結局意気投合しちゃって、そこからずっと仲良くて、大学2年の夏休みに知夫里島のイブキの実家に連れて行ってもらったんだよね。


――それで、どうだったですか、隠岐は?

きよと:島だなって思った。東京からバスで半日かけて、さらに船で三時間くらいかかって。も う、すごい場所にあるなぁって(笑)でもさ、隠岐は贅沢なんだよね。何かに追われる感 覚も誰かと繋がっていなければいけない感覚も、ここにはなかった。良い意味で隠岐は「圏 外」だよ。


――西ノ島Wi-Fiがあって圏外じゃなかったですがね!


きよと:来たことない人にはわからないから、電波が入り辛くてとか言っとけば良いんだよ(笑) というか、まあ電波が、というよりは、なんというか良くも悪くも「圏外」な場所なんだよね、あの島々は。


――ここで、また質問を挿みたいのですが追われることのない隠岐で、何をしたら良いんですか。


きよと:「何もしないで欲しい。ただ在るものを感じて欲しいんだよね」


――何もしないですか、すごく難しいことだと思います。あと、何があるのか。きよとさんの 目で見た在るものを教えてください。


きよと:海があるから、魚がある、船がある、波の音も、空を見上げれば星もある。そういう物を感じて欲しいかなぁ。


――きよとさんは、隠岐に住みたいと思いますか。


きよと:それは、もちろん住みたい気持ちもあるよ。ただ、現実問題として仕事もあるし、塾の 生徒もいる。だから、隠岐は俺の遊びの場であり、良い意味での「圏外」って位置づけが いまのところは丁度良いよ。


――となると、きよとさんの隠岐イベントは定住者を増やすことが目的ではないんですね。


きよと:当たり前じゃん。定住者を増やすってのは難しいんだよ(笑)


――そうですか、それじゃあ、きよとさんのイベントの目的は何ですか?


きよと:イベントの目的はね、圏外である隠岐に行くことで自分の生活を見つめ直して欲しいっ てことかな。親や友人がいた環境から隠岐に来ることで、俺が北海道に行った時のような、 荒野に立つという経験をイベントの参加者にはしてもらいたい。改めて、自分を見つめ直す時間ってなかなかないでしょ。強いて言えば、それが目的かな。


 ――その目的を達成することで何が得られますか?


きよと:なんだろうね。なにかが得られるかもしれないし、何も得られないかもしれないし。得たものに価値があるのかどうかもわかんないね。笑


――つまり?(笑)


きよと:自分で考えろ、感じろ、ってことだね。


――スパルタですね。


きよと:スパルタなのかな。人から与えられるものなんて、そんな大したものじゃないと思うけ ど。更に言えば、この企画の場合は、何かを得ようと模索している参加者には運営も一緒 になって「この参加者は何が得られるのか」というのを探すしね。決して投げやりではな いよ。


――きよとさんの目から見て、前回の参加者は得ることが出来ましたか?


きよと:アンケートを見る限り参加者の9割方は得ていったんじゃない?


――多いですね。前回の参加者は何を得たと言ってましたか?


きよと:それは二つあって、まず一つは狙い通り生活を見直すということかな。それで二つ目が 意外だったんだけど、チャレンジ精神なんだよね。このイベントを通してオーストラリア へ留学を決めた参加者とか隠岐へのインターンを決めた参加者とかさ。何かにチャレンジ する人が増えたんだよね。


――では、きよとさんはイベントを通して何かにチャレンジしたくなりましたか?


きよと:なったね(笑)まず、海外での活動にチャレンジしたくなった。元々、海外でビジネス をしてみたいって気持ちはあったんだけど、今回のイベントを通して、より強く思ったね。 あと、これはまだ先になるんだけど、子どもが大きくなったら地域同士の交換留学にチャ レンジしたい。毎月子どもを友人がいる地域に送ってさ、子どもが気軽に世界を回れるような仕組み作りにチャレンジしたいと思ったよ。


――では最期に、参加を考えている人に一言お願いします。

きよと:運営は全力で何かを見つけるサポートをするから、参加者は何かを見つけたいという想 いを持ってイベントに参加して欲しいかな。もしこれを読んで、行くかを悩んでいるなら、 何かを見つけたいという想いはあるはずなので。


――本日はありがとうございました。隠岐イベントたくさん人が来ることを祈っています。

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